不妊症とは
1年以上妊娠できない状態
妊娠を希望する夫婦が性生活を続けて1年以上妊娠しない場合を「不妊症」と言います。
健康な夫婦の約10組に1組が不妊に悩んでいると言われていますが、近年、妊娠を考える年齢が上昇していることもあり、この割合はもっと高いとも言われています。
不妊の原因として、晩婚化や高齢出産などから、加齢による卵子・精子の質の低下がとして挙げられます。男女ともに年齢が高くなればなるほど、妊娠する確率は低くなります。
なかなか子どもを授からないご夫婦は、早めに検査をしてみることをおすすめいたします。
不妊症の原因
主な原因
不妊の原因は様々ですが、『排卵しない』『卵管の詰まり』『精子が少ない』ことが3大原因と言われています。
そして約半数の夫婦に男性側の問題が存在しています。男女ともに検査や治療に取り組むことが妊娠への近道といえます。
ほか、原因不明なことも多くあります。
過度の疲労やストレスは、女性の排卵障害や着床障害、男性の精子の数が運動率の低下などを引き起こします。
疲労やストレスを抱えないようにしましょう。
不妊原因の男女別内訳
※世界保健機関/WHO調査(7,273カップル)より女性側の主な原因
- 卵巣…排卵障害
- 卵管…閉鎖・狭窄・癒着
- 子宮…筋腫、ポリープ・奇形
- 子宮内膜症
- 内分泌ホルモン異常など
男性側の主な原因
- 精巣…造精機能障害
- 精液性状低下・性交障害
- 内分泌ホルモン異常など
不妊症の検査
必要な検査
検査には、初診時に受けれる検査と後日受けれる検査があります。
女性の検査は主に4つ、男性は主に1つの検査が必要になります。
女性の主な検査
1. 内診・経膣超音波検査
子宮内膜症や子宮筋腫、クラミジア感染症などの病気がないかどうかを調べます。子宮内膜症や子宮筋腫の疑いがある場合には、MRI検査や腹腔鏡検査を追加して行う場合もあります。
2. 子宮卵管造影検査
卵管が詰まっていないかどうか、子宮の中の形に異常がないかどうかを調べます。
3. ホルモンの検査
女性ホルモンの分泌やこれに関係する甲状腺の機能などを調べる血液検査です。妊娠が成立する時期(黄体期)に十分な女性ホルモンが分泌されているかどうかを調べておく必要もあるため、一般的には月経周期にあわせて2回の検査を行います。
4. 性交後試験(Huhnerテスト、またはPCT)
排卵直前の最も妊娠しやすい日に性交を行い、翌日、女性の子宮頸管粘液を採取し、その中に運動精子を認めるかどうかを調べます。直進運動精子が認められない場合は、免疫因子(抗精子抗体)の有無などを調べます。
検査内容詳細引用:日本産科婦人科学会 不妊の検査 女性側の検査
ほか基礎礎体温・クラミジア検査・子宮鏡検査などの検査があります。
男性の主な検査
1. 精液検査
マスターベーションで採取した精液を検査し、精子の数や運動率などを調べます。異常がある場合には精索静脈瘤などの病気がないかどうか、泌尿器科で検査をします。
検査内容詳細引用:日本産科婦人科学会 不妊の検査 男性側の検査
不妊症の治療
おひとりおひとりに合った治療法を選択し、体に優しい治療を目指します。
不妊症の一般検査の結果に基づいて、それぞれの患者さまにあった治療方針を決定します。タイミング療法・薬物療法による排卵促進と黄体機能不全の是正、人工授精が治療の軸になります。
必要があれば子宮筋腫・子宮内膜症・子宮内膜ポリープの手術を行いより妊娠の可能性を高めることもあります。
不妊治療は『一般不妊治療』と『高度生殖医療』の大きく2つに分かれます。
不妊治療はステップアップ方式で、検査後、治療結果を見ながら、負担の少ない方法から不妊治療を開始します。
妊娠率を判断し、患者さまのご希望も考慮しながら順を追ってステップアップしていきますが、ご夫婦の年齢や条件によって各個人差があります。
ステップを進むにつれて、通院の回数・かかる時間が多くなります。
一般不妊治療
タイミング法
排卵の2日前ごろ、最も妊娠しやすいと言われている時期に性交を持つようにする方法です。卵胞の大きさや尿中のホルモンを測定し、排卵日を推定します。排卵日の周辺で数回の通院が必要です。
排卵誘発法
内服薬や注射で排卵を促す方法です。排卵障害の場合に使用する方法ですが、排卵があっても、人工授精の妊娠率を上げる目的で使用する場合もあります。
高度生殖医療(ART:Assisted Reproductive Technology)
生殖補助医療(ART)とは、生殖補助医療「妊娠を成立させるためにヒト卵子と精子、あるいは胚を取り扱うことを含むすべての治療あるいは方法」です。一般的には体外受精・胚移植(IVF-ET)、卵細胞質内精子注入・胚移植(ICSI-ET)、および凍結・融解胚移植等の不妊症治療法の総称となります。
引用:日本産科婦人科学会 11.生殖補助医療(ART)
人工授精
マスターベーションで採取した精液から良好な精子を取り出して、最も妊娠しやすい時期に子宮内に注入する方法です。
体外受精・顕微授精
膣の方から細い針を穿刺して卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させ、数日後に子宮内に受精卵(胚)を戻す方法です。精子と卵子が自然に受精しない場合、あるいは精子数が極端に少ない場合は、細い針で精子を卵子の中に注入する方法(顕微授精)を行います。1回の体外受精でたくさんの受精卵が得られた場合、余剰胚を凍結し、妊娠しなかった場合や次の子どもを望む場合に戻す方法もあります(凍結胚移植)。
①卵巣に針を刺し、卵を採取します。
②体外で精子と受精させます。
(上段:顕微授精、下段:通常の体外受精)
③受精を確認し、卵の分割を待ちます。
④子宮内に受精卵を戻します。
日本における治療実績
日本では、現在40万件を超える生殖補助技術が行われています(2020年時点)。日本産科婦人科学会より、全国のART登録施設の2020年体外受精・胚移植等の臨床実施成績が公開されました。